家賃は手取りの何割が目安?基本的な考え方を解説
まずは、家賃と手取りの適正な割合について、基本的な考え方を整理していきましょう。
「家賃は収入の3割」は本当?3割が目安とされてきた背景
「家賃は収入の3割程度が目安」という考え方は、古くから日本の賃貸市場で広く知られてきました。この基準は、家賃を3割以内に収めれば、残りの7割で食費や光熱費、交通費、貯蓄などの生活費をまかなえるというシンプルな家計バランスに基づいています。
しかし、ここで注意が必要なのは、この「3割」がもともと「額面収入(税引き前の給与)」を基準にしていたという点です。額面収入からは社会保険料や税金が2〜3割ほど差し引かれるため、実際に手元に残る「手取り収入」で計算すると、3割どころか36〜40%近くを家賃に充てていることになります。
そのため現在では、家賃の目安は「額面」ではなく「手取り」を基準に考えるのが一般的になりつつあります。
最新の適正割合は「手取りの25〜30%」が目安
近年の物価上昇や社会保険料の増加、通信費やサブスクリプションサービスといった新たな固定費の登場により、家計の支出構造は大きく変化しています。こうした背景から、現在では家賃は手取りの何割が適正かという問いに対し、多くの専門家が「手取り収入の25〜30%」を推奨しています。
国土交通省の「令和5年度住宅市場動向調査」によると、賃貸物件に住む世帯の平均家賃は約7万4,000円、平均世帯年収は約492万円です。手取りを額面年収の約80%とすると、月々の手取り額は約32.8万円となり、家賃の占める割合は約23%にあたります。つまり、実態としても手取りの2割台前半に収まっているのが平均的な姿なのです。
家賃は手取りの何割が正解かという問いに画一的な答えはありませんが、生活に余裕を持たせたいなら25%以内、最低限の余裕を確保するなら30%以内を目安にするのがよいでしょう。
「3割」と「3分の1」の違いに注意
家賃の目安として「手取りの3割」と「手取りの3分の1」が混同されることがありますが、実は微妙に数字が異なります。3割は30%、3分の1は約33.3%を意味します。
たとえば手取りが18万円の場合、3割なら5万4,000円、3分の1なら約6万円となり、約6,000円の差が生じます。この差は月単位では小さく見えますが、年間では約7万2,000円、2年間では約14万4,000円もの差になります。家賃は毎月必ず発生する固定費であるため、この差は決して無視できません。
なぜ「手取りの3割」では厳しいのか?その理由を解説
かつては適正とされていた「手取りの3割」が、なぜ現在では厳しいといわれているのでしょうか。その理由を詳しく見ていきましょう。
物価上昇と固定費の増加
近年の食料品・光熱費の値上がりにより、家賃以外の生活コストは確実に上昇しています。総務省の家計調査によると、単身世帯の住居費以外の月間支出平均は約13万9,000円にのぼります。手取り20万円の方が家賃を3割(6万円)に設定した場合、残りは14万円。ここから約13万9,000円の生活費を差し引くと、貯蓄や予備費に回せるのはわずか1,000円程度という計算になります。
さらに、スマートフォン代やインターネット回線、動画配信サービスなどの通信関連費用は、20年前にはほとんど存在しなかった支出項目です。こうした現代特有の固定費が増えた分、家賃に回せる金額は以前より少なくなっているのが実情です。
ライフスタイルの多様化
同じ手取り額でも、生活にかかる費用は人それぞれ大きく異なります。自炊中心の人と外食が多い人では食費に月1〜2万円の差が出ますし、車を所有している人は駐車場代やガソリン代、保険料などで月数万円の出費が加わります。
趣味や交際費、奨学金の返済、資格取得のための費用など、個人の事情によって必要な支出は多岐にわたります。画一的な「3割ルール」では、こうした多様なライフスタイルに対応しきれないのです。
【手取り別】適正家賃と生活費シミュレーション
家賃は手取りの何割が適切かを実感するために、手取り額ごとのシミュレーションを見ていきましょう。ここでは25%と30%の2パターンで家賃を設定し、それぞれの生活費イメージをご紹介します。
手取り15万円の場合の家賃目安
手取り15万円の場合、家賃の目安は25%で3万7,500円、30%で4万5,000円です。都心部では物件探しが難しい金額帯ですが、地方都市や郊外のワンルーム・1Kであれば、この範囲内で見つかる可能性があります。
家賃を4万円に設定した場合、残りの11万円で食費(約3万円)、光熱費(約1万円)、通信費(約5,000円)、交通費(約5,000円)、日用品(約5,000円)を支払うと、残りは約5万5,000円。ここから交際費や被服費を捻出すると、貯蓄に回せる金額はかなり限られます。手取り15万円では、家賃をできるだけ低く抑えることが生活の安定に直結します。
手取り20万円の場合の家賃目安
手取り20万円の場合、家賃の目安は25%で5万円、30%で6万円です。新社会人の方が一人暮らしを始める際の典型的な手取り額といえるでしょう。
家賃5万円に設定できれば、残り15万円から生活費を差し引いても、毎月2〜3万円程度の貯蓄が可能です。一方、家賃を7万円(35%)にすると、生活費を切り詰めなければ貯蓄が難しくなります。手取り20万円では、家賃5〜6万円の範囲で探すのが無理のないラインです。
手取り25万円の場合の家賃目安
手取り25万円の場合、家賃の目安は25%で6万2,500円、30%で7万5,000円です。この収入帯であれば、都市部でも1K〜1LDKの物件を選べる幅が広がります。
家賃を7万円に設定した場合、残り18万円から生活費を差し引いて、月4〜5万円の貯蓄も現実的です。ただし、車を所有していたり、趣味にお金をかけたい場合は、家賃を6万円台に抑えてその分を他の支出に充てるのもよい選択です。
手取り30万円以上の場合の家賃目安
手取り30万円の場合、家賃の目安は25%で7万5,000円、30%で9万円です。都市部でも築浅のマンションや駅近物件など、条件のよい物件を選びやすくなります。
ただし、手取りが増えるにつれて家賃も上げてしまいがちですが、注意が必要です。家賃は一度上げると簡単には下げられません。収入に余裕があるときこそ家賃を手取りの25%程度に抑え、浮いた分を貯蓄や資産形成に回すことで、将来の選択肢を広げることができます。
なお、ファミリー世帯で手取り40万円の場合は、家賃10〜12万円が目安になります。ただし、子どもの教育費や食費が単身者よりも大幅に増えるため、家賃の割合はやや低めに設定するのが安心です。
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家賃を決める際に見落としがちな5つの注意点
家賃は手取りの何割かだけで判断するのではなく、以下の注意点も合わせて確認することが大切です。
管理費・共益費を含めた「総支払額」で考える
家賃が予算内に収まっていても、管理費や共益費が別途かかる場合は要注意です。たとえば家賃6万円の物件でも、管理費が5,000円なら実質的な住居費は6万5,000円になります。家賃の割合を計算する際は、管理費や共益費を含めた総支払額で考えましょう。
また、車やバイクを持っている方は駐車場代も住居費として計算に含める必要があります。駐車場代が月1万円かかれば、実質的な住居費はさらに上がります。
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初期費用も忘れずに計算する
賃貸物件に入居する際は、家賃以外にも敷金・礼金・仲介手数料・前家賃・火災保険料・保証会社利用料など、家賃の4〜6ヶ月分にあたる初期費用が必要です。月々の家賃を予算内に収めていても、初期費用が大きな負担になることがあります。
物件選びの段階で初期費用の見積もりを確認し、無理なく支払えるかどうかを判断しましょう。敷金・礼金ゼロの物件やフリーレント物件を選ぶことで、初期費用を大幅に抑えることも可能です。
ボーナスを家賃計算に含めない
家賃の予算を考える際、ボーナスをあてにした計算は危険です。ボーナスは会社の業績や個人の評価によって変動する可能性があり、最悪の場合はゼロになることもあります。毎月の家賃は、毎月の手取り給与だけでまかなえる金額に設定しましょう。
同様に、住宅手当(家賃補助)が支給されている場合も注意が必要です。転職や社内制度の変更で住宅手当がなくなる可能性もあるため、手当を含めない金額で家計が成り立つかどうかも確認しておくと安心です。
更新料を見据えた計画を立てる
多くの賃貸物件では、2年ごとに契約更新があり、更新料として家賃1ヶ月分を支払うのが一般的です。家賃7万円の物件なら、2年に1回7万円の出費が発生する計算になります。
更新料を月割りにすると、毎月約2,900円の追加負担です。この分も含めて家賃の割合を考えると、より正確な家計計画が立てられます。
将来のライフイベントを想定する
結婚・出産・転職・介護など、将来のライフイベントによって収入や支出は大きく変わります。現在の手取り額だけで家賃を決めるのではなく、数年先のライフプランも考慮に入れましょう。
たとえば、結婚を考えている方は、パートナーの収入も含めた家計全体で判断する必要がありますし、出産予定がある場合は、育児休業中の収入減少も考慮しておくべきです。
自分に合った適正家賃の決め方|2つのアプローチ
家賃は手取りの何割という目安を知った上で、自分にとっての適正家賃を具体的に算出する方法を2つご紹介します。
方法1:生活費から逆算して家賃を決める
最もおすすめなのが、生活費から逆算するアプローチです。まず毎月の支出を洗い出し、貯蓄目標額を設定した上で、残りを家賃に充てるという考え方です。
具体的には、「手取り月収 − 生活費 − 貯蓄目標額 = 家賃の上限」という計算式になります。たとえば手取り20万円で、生活費が10万円、貯蓄目標が3万円の場合、家賃の上限は7万円です。この方法であれば、生活費や貯蓄を確保した上で無理のない家賃が算出できます。
家計簿をつけている方は過去のデータをもとに計算できますし、これから一人暮らしを始める方は、食費3〜4万円、光熱費1万円、通信費5,000円〜1万円、交通費5,000円〜1万円、日用品5,000円程度を最低限の目安として計算してみましょう。
方法2:住みたいエリアの相場から生活費を調整する
もうひとつのアプローチは、住みたいエリアや条件を先に決め、それに合わせて生活費を調整する方法です。たとえば、通勤時間を短くするために駅近の物件に住みたい場合、家賃が高くなる代わりに交通費や時間のコストを削減できます。
ただし、家賃を優先しすぎると、食費や交際費を極端に削ることになり、生活の質が低下する恐れがあります。家賃が手取りの30%を超える場合は、ほかの固定費(通信費のプラン見直し、保険の見直しなど)を削減できないかを検討しましょう。
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家賃を抑えるための実践的な7つのコツ
手取りに対する家賃の割合を下げたい方のために、物件選びで家賃を抑えるための具体的なコツをご紹介します。
最寄り駅から少し離れた物件を選ぶ
駅から徒歩10分以上の物件は、駅近物件と比べて家賃が1〜2割ほど安くなる傾向があります。駅からの距離が多少あっても、自転車を利用すれば通勤・通学に支障が出ないケースも多いでしょう。健康維持のためのウォーキングと考えれば、一石二鳥です。
築年数にこだわりすぎない
築年数が10年以上の物件は、築浅物件に比べて家賃が割安に設定されていることが多くあります。築年数が古くても、リノベーション済みの物件であれば室内はきれいで快適に暮らせます。外観や築年数だけで判断せず、実際に内見して室内の状態を確認することが大切です。
各駅停車のみの駅を検討する
急行や快速が停車する駅の周辺は家賃相場が高くなりがちですが、各駅停車のみの駅であれば相場が抑えられます。急行停車駅のひとつ隣の駅に住むだけで、家賃が5,000円〜1万円安くなることも珍しくありません。
間取りや広さを見直す
一人暮らしであれば、1LDKではなく1Kやワンルームを選ぶことで、家賃を大幅に抑えられます。在宅勤務の有無やライフスタイルに合わせて、本当に必要な広さを見極めましょう。
引っ越しの閑散期を狙う
1〜3月の繁忙期は物件の需要が高く、家賃も高めに設定されがちです。一方、4〜8月や10〜12月の閑散期は、大家さんが空室を埋めたいと考えるため、家賃交渉が通りやすくなります。時期をずらして物件を探すことで、よりお得な条件を引き出せる可能性があります。
フリーレント物件を活用する
フリーレント物件は、入居後の一定期間(1〜3ヶ月程度)の家賃が無料になる物件です。月々の家賃自体は変わりませんが、トータルの住居費を抑える効果があります。年間の総支払額で考えれば、実質的な家賃の割合を下げることにもつながります。
住宅手当がある会社を活用する
勤務先に住宅手当(家賃補助)制度がある場合は、積極的に活用しましょう。住宅手当が月2万円支給されれば、実質的な家賃負担は大きく軽減されます。ただし、先述のとおり、住宅手当がなくなった場合でも家計が成り立つかどうかは必ず確認しておきましょう。
まとめ|家賃は手取りの何割?自分に合った適正家賃で快適な暮らしを
家賃は手取りの何割が適正かという問いに対する答えは、一般的には「手取り収入の25〜30%」が目安です。かつてのように「収入の3割」で考えると、物価上昇や固定費の増加により生活が圧迫されるリスクがあります。
適正な家賃を決めるためのポイントは3つあります。第一に、額面ではなく手取りを基準にすること。第二に、管理費や共益費を含めた総支払額で計算すること。第三に、自分のライフスタイルや将来のライフプランに合わせて柔軟に調整することです。
割合だけに頼るのではなく、生活費から逆算して「自分にとっての適正家賃」を具体的に算出することが、無理のない物件選びにつながります。駅からの距離や築年数、間取りなどの条件を柔軟に見直せば、手取りに対する家賃の割合を下げながらも、快適な住まいを見つけることは十分に可能です。
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